完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される
だが、恋愛経験ゼロの千紗にだって一方的になにかを受け取るだけの関係はいずれ破綻するとわかっている。
今は離れて自分を立て直すことが必要だと思った。
バズりにバズった動画の収益のおかげで、借金を完済し、思い出の自宅を売却せずに済むことにもなった。
──色々ありすぎて疲れちゃった。世間様の目なんて、いい加減だし気にするだけ損だ。一時的にもてはやされたところで、すぐに忘れるに決まっている。
井村とは毎日電話で話しているが、もう少し身辺が静かになるまでこちらにいるつもりだった。
昼間は馬に乗ったり、牧羊犬と一緒に羊の群れを移動させたりしていた。
苛められた日々も、炎上に怯えた夜も、今はもう風と共に過ぎ去りし過去。
──私も地球の一部……。小さなことで悩んでいたのが馬鹿みたい。あの夕日の綺麗さに比べたら、なんてことない。
空は大きいし、夜は星がよく見える。目に入るのは草の色と空の青だけ。余計なものがなにもない。
なにより広い敷地を出なければ誰にも会わずに済む。
ここでの暮らしの平穏さに救われている一方、自分の核が抜け落ちたような気がしていた。