完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される




 千紗が北海道へ行ってしばらくして、母も少し病状が回復し無事退院できた。

「あなたがせっかく稼いだお金、使っちゃって良かったの?」
「お父さんの曲で借金返したんだからチャラだよ。お釣りも来たから、しばらくニートでいられるし。お父さんだって事業を広げるつもりで借りたお金なんだし、急に死んじゃってきっと私たちのこと沢山心配したと思うよ。だから天国から井村さんを使ってあの曲を私に届けたんじゃないかな」
「あの曲、きっとお父さんのプレゼントだったのねぇ。井村さんの執念深い調査のたまものね」

 母はおっとりしているが、たまに毒舌なことを言う。

「うん」
「あなた、大丈夫なの」
「え? 確かに色々あったけどもう大丈夫」
「そうじゃなくって、こっちに来て、遠距離恋愛なんて大変よ」
「あ……うん」
「それになんか呆けた顔して。休むのはいいけど私のためにいるなら、やめてね。自分の好きなことしなさい」
「してるよ。ログハウス建てたり、羊の乳からチーズ作ったり」
「ここは一時的に休むにはいいけど、ずっといるのはどうかしら。あなたはやっぱり普通の子じゃないのよね」
「普通だよ!! 平凡を絵に描いたような女の子だよ」
「普通の子はログハウスとか建てないから。まぁ、少しゆっくりしなさい。あなたには負担たくさんかけちゃったから」

 まだなにか言いたげな母だったが、それ以上は言葉を濁した。

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