完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される
「それに私高校中退だし、職歴もありませんよ? 大卒で激戦で就活勝ち抜いた立花さんとか怒るんじゃないですか」
「立花さんに人事権はないし、実際の仕事っぷりがよければ、うちは学歴は問わないよ。もう君が優秀なのはわかってるし」
「はぁ……」

 正社員になっても、ずっと立花にいびられるなんてまっぴらだった。借金を返し終わったら、就活も考えたいが、今は配信に集中したい。

「ね。すぐにとは言わないからさ」
「はい。考えておきます」
「あと、君に残業やらせないようにみんなに言っておくから」

 ──そういうことするから、私が苛めの対象になるんですが。 
 
 内心不満たっぷりのまま、井村の顔を見る。タイプではないが、いかにも優秀そうで誰にでも優しいがゆえに、クラスにいたら女子の争いを起こすタイプだ。
 きっと人を妬んだり、苛められたりする立場になったことがないから、わからないのだ。

「いや、言わなくていいです」

 千紗はすげなく言い放ち、会議室をあとにした。

 その日も就業間近になって、立花が面倒な仕事を押し付けにやってきた。わざと数日分溜めて一気に渡してくるのが最近の手口だった。
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