完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される
あんなおとなしい女の子がエロい格好を世界に晒している──そのギャップに井村は鼻血を出しそうになった。
と同時に、その音楽性に驚いた。
「これ……ただのお遊びってレベルじゃない」
三本の弦が奏でる力強くも繊細かつエネルギッシュな音。華奢な体なのに迫力が凄い。
音楽に詳しくない井村でも、千紗の演奏がお遊びレベルでないことは一目瞭然だった。
──一つ一つの音が煌めいている。あたかもむき出しの魂に訴えかけてくるような迫力──。
普段感情表現をあまりしない千紗だからこそ、音楽に全てをぶつけているのかもしれない。
その日の演奏は5分ほどだったが、演奏が終わる頃、井村は自分が涙を流していることに気が付いた。
それから千紗の動画を全て見た。チャンネル名は「玉響の調べ」。
千紗はタマと名乗っていた。
切ない曲は悲しいほどしっとりと、明るい曲は弾けるほどに楽しそうだった。
汗だくで一心不乱に演奏する姿は女神のような輝きを放っていた。人気が出るのも当然だ。
顔から上はお面で隠してはいるものの、身バレ対策がガバガバすぎた。
このままでは危険だ。
すぐにSNSでアカウントを作り、一リスナーとして千紗に注意を促した。
慌てていたので、ハンドルネームは亡くなった曾祖父のものにした。
初めまして。いつも動画を拝見しているファンです。
突然のDM失礼します。実はタマ様の動画を拝見し、セキュリティの面で少し気を付けたほうがいいと思ったところがございますので、ご連絡差し上げました。
〇月〇日の配信で、カーテンが五センチほど開いていますが、そこから自宅の位置など特定されることもあり──
延々とネットの身バレの危険性を説明するメッセージを送ると、すぐに返事が来た。
「ありがとうございます! 色々ネットの危険性に無知な私にご教授下さり、まことに感謝申し上げます。余計なお世話とはとんでもございません。一人でやっているため、アドバイス頂けるのはとても嬉しいです。助かりました」