完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される
 会社での塩対応とは別人のようなメッセージだった。

「あの……ついでみたいになって申し訳ないけど、演奏すっごいよかったです。俺感動して泣いちゃって」
「え!! 恐縮です。そう言って頂けるととても嬉しいです」
「アレンジも本当にセンスがよくて、心に訴えかけてくるものがありました。体に気を付けてこれからも頑張ってください」

 千紗の演奏への感想などを送るととても喜んでくれた。本当は一度注意喚起のDMを送って終わりにするつもりだったのに、ネット上での円滑なコミュニケーションについ、田吾作のまま交流を続けてしまった。
 脱げ脱げというファンと違い、千紗の安全について語ったせいか、会社とは打って変わって素直に心を開いてくれた。

「コスプレのことばっかり言われるので、肝心の音楽について言われるのはとても嬉しいです」
「すごく才能があると思う。頑張ってね。ファンより」

 それは嘘ではなかった。千紗の演奏には、人の心を揺さぶるなにかがあった。
 そのなにかに井村は完全に心を奪われてしまったのだ。
 ──ヤバい。
 
 三十年生きてきて、こういう思いを誰かに抱いたのは初めてだった。
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