完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される

 アイは試すように千紗を見て笑った。そんなこと言ったところで、千紗の関心は井村にないのだから、どうぞと言われるに決まってる。
 だが、千紗は黙り込んだ。

「……………」
「あっ、私次の約束あるんだった。じゃ、あとは二人で! 会計よろしく!」
 
 気まずい沈黙の中、アイさんはさっさと荷物をもって去っていった。去り際に井村に目くばせをし、口パクで「いける!」と言っていた。

「ごめん……女子会に急に混じっちゃって」
「どうしてついて来たんですか? アイさんがきれいだから?」

 むっつりしたまま、下を向いて千紗は言う。

「違う。君と話したかったから」
「…………井村さん、立花さんともデートしてたじゃないですか」
「だから! 今日は仕事のイベントで来てたんだ。佐藤と来るはずだったのに、急に子供が熱を出したとかで」
「腕を組んでたのに?」
「あれは、不意打ちでされただけで」
「本当に……?」
「本当に!」
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