聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「残念です…翠の愛は、その程度のものだったんですね」
「〜〜っ!?」
捨てられた子犬のような、うるうるとした瞳が私を捕らえた。
っ…な、なんですかそれっ…。
紫呉さんはいったい、いくつの顔を持っているんだろう。
初めて見る紫呉さんの切なげな表情に、胸が高鳴ってドキドキが収まってくれない。
そんな顔で見られたら、私には否定の選択しかできないじゃないですか…。
「っわ、私も…その、会いたかった…です…」
顔から湯気がでそうなほどに恥ずかしくて、いたたまれなくて。
じわじわと頬に熱が集中していくのが自分でもわかる。
「っ…も、もう無理です…っ、恥ずかしくて死んじゃうっ…」
さすがに耐えられなくなって、顔を手で覆った。
ここが人前だということも忘れて、世間一般で言う『バカップル』と呼ばれるような行為をしてしまったと猛反省。