聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

紫呉さんにとって仁さんは、先輩みたいな存在だからなのかもしれない。



暴走族の世界における上下関係というのはあまり詳しくないけれど、きっとそういうものなのだと解釈した。



「今はもちろん抜けてるぞ?それに、紫呉が二代目総長になってからは周りの連中も大人しくなってきたし…俺より上手くやってるよな」



「へぇ…!そうなんですね…!」



仁さんが紫呉さんを褒めると、紫呉さんはバツの悪そうな顔をして口を尖らせた。



「…急になんですか?気持ち悪い」



「おいおい、今のは褒めただけだろ?相変わらずひねくれてんなぁ」



「余計なお世話です」



ふふっ、紫呉さんと仁さんは喧嘩するほど仲がいいってやつなのかな?



紫呉さんも、仁さんのことを嫌ってるわけじゃなさそうだし…。



微笑ましいなぁ…なんて呑気に二人の会話を聞いていたら、急に仁さんが表情を険しくした。



「いや…真面目な話、お前のそういうところが気に食わねぇっていう輩はいると思うぞ」



「………」



仁さんの一言で空気が一変し、紫呉さんの顔も硬いものとなった。
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