聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「そういう奴らがNovaを落とそうとしてんだって、前も言った気がするけどな」
さっきとは打って変わって、仁さんは落ち着いた声で紫呉さんを諭している。
「っ、それは…!」
「紫呉」
ワントーン下がった低音が、店の中で静かに響いた。
二人の間に、僅かな静寂が走る。
「お前はもう、一人じゃねぇんだ。あてもなく一人歩きしていた中坊時代とは訳が違う…。賢いお前のことだから、言われなくてもそれくらいわかってるだろ」
「……………わかってますよ、それくらい」
「…ならいいけど。翠ちゃんがいるってことも忘れんなよ?」
「えぇ、忘れるわけがありません」
やれやれと肩をすくめる仁さんと、したり顔でそう言った紫呉さん。
話し合いの行く末を見守っていた私はようやく緊張感が解けて、全身の力が一気に抜けた気がした。
よ、良かった……急に空気が変わったから、びっくりしちゃったよ…。