聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「………っ」
絶句した。
「…翠、大丈夫ですか?かなり顔色が悪いですよ?」
「やっぱ、翠ちゃんも嫌いか?」
自分が愚鈍であることを、ハッキリ自覚した瞬間。
なんで、気が付かなかったの………?
なんで───蓮見先輩の匂いがするの…?
「っすみ、ませ…っ…ちょっと、落ち着かせてください…」
甘く、薔薇のようなフローラルな香り。
その中にあるミント感強めの爽やかさが、徐々に出てくる。
この香水“単体”は嫌いじゃないんだけど…。
蓮見先輩といる時に感じた、底知れない恐怖と胸のざわつき。
裏表の無さそうに見える、ニコニコとしたあの笑顔。
それら全てがこの匂いと結ばれていく感覚に、吐き気を覚えた。
「翠…!?…っ仁さん、翠を奥に運ぶので準備してください」
「今もうやってる…!」
二人が慌てて私を心配してくれているのに、「ありがとう」の一言も言えない。