聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

「珍しいですよね、紫なんて」



普段は滅多に見かけることがないからか、余計に物珍しくてじっくり見てしまう。



でも、頭の中には紫呉さんしか浮かんでこない。



ふふっ…やっぱり私、紫呉さんのことばっかり。



「私にとって、紫と言えば紫呉さんってイメージなんです」



思ったことをそのまま言ったら、紫呉さんが目をぱちぱちと瞬かせて驚いた。



「…俺、ですか?」



「はい。紫呉さんの名前に紫が入ってるので、思い出しちゃうんです」



自分で言いながら思わずクスッとしてしまう。



我ながら単純すぎるよね。



紫の物を見る度に紫呉さんが頭によぎるんだ。



「かっこいい名前だなぁって、ずっと思ってました」



今まで胸に溜めていたことを言い切ってから、どんな反応をしているのかと隣を歩く紫呉さんに視線をやり…後悔した。



「…そうですか。翠にかっこいいと思ってもらえるなら、この名前も悪くないかもしれませんね」



口元は笑っているのに、目が全然笑っていない。



さっきまで私を映していた綺麗な瞳も、今は灰色に曇っていて。
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