聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「し、紫呉さ───」
「この名前は、母親が付けたものなんです。父のように気品に溢れ、誇り高き男性となり、周囲から尊敬されるような人になってほしい…と。父を愛していた母は、そんな想いを俺に託したそうですよ」
声をかけようとして、口をつぐんだ。
っ…こんな紫呉さんの顔、見たことない。
伏し目がちに笑い、どこか悲しそうに話す紫呉さんは、見ているこちらまで胸が締め付けられるほどの苦しさに襲われているように思えた。
「勝手ですよね。親が子に気品だとか誇り高き…だとか。終いには、尊敬されるような人に…だなんて。おこがましいにも程がある」
今まで一度も見せなかった紫呉さんの心の奥底にあるものに、触れていいのかわからない。
「そういえば、紫の薔薇の花言葉を知ってますか?」
なんて声をかければいいのか戸惑っていると、紫呉さんの方から話を振られてついびっくりする。
「は、花言葉…?」
「紫の薔薇の花言葉は、“気品”、“誇り”、そして“尊敬”。面白いことに、俺の名前に込められた意味合い全てが入ってるんです」
「…っ!!」
なんてことのないような顔して話す紫呉さんがあまりにも痛々しくて、言葉を失ってしまった。