聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい

その次の瞬間、紫呉さんの方から携帯の着信音が聞こえてきてドキリとする。



「あ…えっと、私のことは気にしないで出てください」



気づけばそう言っていて、無理やり口角を上げた。



「…すみません。多分…いや、絶対ですね。この電話は呼び出しです。急いで行かないと」



申し訳なさそうに謝る紫呉さんの表情は、いつの間にかいつも私に向ける優しげなものに戻っていて。



「もっと翠との時間を楽しみたかったんですが、ここまでのようです。こんなこともあろうかと、斗真を呼んでおいたので送ってもらってください」



「えっ…斗真さん??」



いきなり斗真さんの名前が出てきたと思ったら、バラ園を抜けて手を引かれるがまま大通りに連れてこられた。



かなり急いでいたのか、大通りに出るまでたったの数分もかからなかったからなにも聞けずじまい。



「あ、翠ちゃーん。こっちこっち!」



「ほ、本当に斗真さんがいる…」



バイクに乗った斗真さんが手をブンブン振って私の名前を呼んでいた。



「では、これで失礼します。最後にした話は忘れてください」



斗真さんに気を取られていたら、紫呉さんが私の頭にぽんと置いてそう呟いた。

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