人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
「アリア、ベッドで寝ろよ。動けないならお姫様抱っこで運んでやろうか?」

 と冗談混じりでロイがそう言うと、アリアは若干焦点の合わない虚な視線をロイに寄越しながら、

「ん」

 と両手をロイの方に差し出した。
 アリアが本当にお姫様抱っこを所望するとは思わず一瞬面食らった顔で固まったロイは、

「ねだり方が子ども。本当に色気ないな」

 と笑ってアリアを抱き抱えた。
 普段なら絶対してこないくせに、ぎゅっと抱きつきロイの首に腕を回すアリアに、飲ませ過ぎたなとロイは苦笑する。

「いつ、なら」

 アリアをベッドに下ろそうとしたところで、アリアが小さくつぶやく。

「どうした?」

「いつなら……ロイ様の邪魔にならない?」

 アリアはコテンと身体をロイに預けたまま小さく尋ねる。

「邪魔したくなくて。そう考えたらいつ会いに行けばいいか分からなくて」

 行けなかったとそう話すアリアをベッドに下ろして、彼女と視線を合わせる。
 淡いピンク色の瞳には緊張と罪悪感が混ざっていた。
 ふっと優しく笑ったロイは彼女の髪を優しく撫でる。

「それが聞きたいけど聞けなくて、緊張して飲むペース早かったのか?」

 こくんと素直に頷くアリアに、ロイはなんとも言えない暖かな感情を覚える。

「……ずっとそれを考えてたのか?」

 こくんと小さく頷くアリアを見て、彼女に触れたくなる。

「アリア、キスしていい?」

「ダメ」

「そこは即答なんだな」

 酔っていても確固たる意思で断るアリアに苦笑して、

「じゃあハグは?」

 と尋ねるとアリアは少し考えてどうぞと笑った。
 ロイは割れ物でも扱うように大事そうにアリアの事を抱きしめる。
 抱きしめ返してくるアリアの心音を聞きながら、そっと髪を撫でロイはアリアの髪にキスをした。

「アリアが早くても大丈夫なら朝一緒に食事しないか?」

「朝ごはん?」

 聞き返すアリアに、

「朝なら無理せず絶対時間空けられるから」

 とロイは話す。

「じゃあ月1で」

「少ない。毎日とは言わんが、もう少し歩み寄りの姿勢が欲しい」

「じゃあ月2」

「……アリアせめて週3〜4回とか」

「週1回。それ以上は譲歩できません。あなたすぐ無理するし、平気なフリして嘘つくし」

 大丈夫そうなら頻度考えますと言うアリアに分かったとロイは了承した。
 気が抜けたのか、ロイの背中に回していたアリアの腕から力が抜ける。
 ロイは名残惜しそうにアリアを放しベッドに寝かせてやる。
 トロンとした眠そうな目でロイの琥珀色の瞳を見たアリアは、

「聞けて良かった。……会えるの、楽しみ」

 ふふっと小さく笑ってゆっくり目を閉じるとそのまま規則正しい寝息を立てはじめる。
 そんなアリアの寝顔を見つめて、

「やばいな、アリアが普通に可愛く見える。俺末期かもしんない」

 そうつぶやいたロイは、

「俺も楽しみにしてる。おやすみ、アリア」

 寝ているアリアの額に口付けを落として優しく笑った。
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