人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
「……姫、やっぱりあなたには悪女も悪役姫も向いてない」
ロイにそう言われ淡いピンク色の瞳をきょとんとさせたアリアは苦笑し、
「殿下、未来を予言しましょうか? このまま離縁しなかったら、2年と経たずにあなたは私を悪役姫と呼びます。私を悪役姫にしたくないなら離縁してくれません?」
とそう言った。
ロイだけじゃない。聖女ヒナが活躍し、彼女が皇太子の寵愛を受ける2年後のこの帝国で、誰もがアリアを見て悪役姫と指をさすのだ。
それは小説に明記された既定路線。
「姫にも読めない未来があるようだ。それに今回は俺の勝ちです」
諦めて皇太子妃続投してくださいとロイはアリアに近づくと彼女のシャンパンゴールドの髪の上にとんっと何かを載せる。
「うーん、姫には王冠よりティアラの方が似合いますね。今度仕立てましょうか」
姫はどんな宝石が好きですか? とキラキラした笑顔で聞いてくるロイに、アリアは一瞬ぽかんとした表情を浮かべたあと、真っ赤になって、
「ちょっ、殿下。何してくれてるんですかっ!?」
と、ものすごく怒った口調でそう言った。
「雑っ!! 王冠イベントすっごい大事なシーンなのに、何悪役姫の頭に載せてんの!?」
王冠イベントはこの小説の神回トキメキポイントですけどっ!! と小説のファンだった2回目の人生を思い出し、アリアは叫ぶ。
「手軽に載せるなーー!! もう! もう!! 乙女の夢壊れるでしょ? 2年後にやってよ。運命の相手に!! できたらもう少しロマンチックに」
小説の大筋変える気はさらさらないんだって、っと内心で付け足しつつ不満気にそう述べるアリアにロイは口元を抑えて笑う。
「もう、私は怒っているんです。何笑ってるんですか!!」
「いや、うん。俺、王冠載せただけでなんで姫にこんなに怒られてるんだろうなって」
悪役姫だと主張する彼女は、大嫌いだと宣った相手の怪我の心配をし、離縁したい相手の前で泣きそうな顔をしたり、安堵したり、笑ったり、怒ったり、こんなに短時間でよくもまぁ素直にくるくると表情を変えられるものだとロイは感心するとともにアリアへの興味が増す。
おそらく、本来の彼女はこっちなのだろう。
何がアリアを頑なにしているのかは、今時点では分からないけれど。
「分かりました。2年後にやります。もう少しロマンチックに、ね」
載せる相手はアリアが思う"運命"とは限らないが、と内心で付け足したロイは、ひょいっと王冠をアリアの頭から取り上げて回収する。
「……そう、ですよ。2年後に優勝して殿下の傍らにいる最愛の方に捧げてくださいませ」
ロイの手元に回収された王冠を見ながらちょっと残念だなんて思ってしまった自分を嗜めて、ロイから視線を逸らしたアリアは自分に言い聞かせるように、ロイにそう告げた。
そんなアリアを見たロイはアリアの手を取って、その上に静かに王冠を載せる。
「なので、2年後までコレは姫に預けておきます」
「はい? いりませんよっ」
ロイに王冠を預けられる意図が分からず、押し返そうとしたアリアに、
「あげるとは言ってない。物欲しそうな顔で王冠を見ている姫に貸してあげるだけです」
ロイはそう言って揶揄うような目をして笑った。
「なっ!」
そんなロイにアリアが反論の言葉を紡ぐより早く、
「あまり姫の負担になってもいけないので、今日は引き上げます。続きはまた明日改めて」
ロイはそう言い残して颯爽と去っていく。
「もう、なんなのよ!」
パタンと閉じた部屋のドアを見つめてつぶやくアリアは、手元に残った王冠に視線を落とす。
「……そんなに、物欲しそうな顔……してたかしら?」
アリアは周りに誰もいない事を確かめてから、
「今だけ。ちょっとだけ。ちゃんと、返すから」
頬に感じる引かない熱と早くなった心音を沈めるようにきゅっと王冠を大事そうに胸に抱きしめた。
ロイにそう言われ淡いピンク色の瞳をきょとんとさせたアリアは苦笑し、
「殿下、未来を予言しましょうか? このまま離縁しなかったら、2年と経たずにあなたは私を悪役姫と呼びます。私を悪役姫にしたくないなら離縁してくれません?」
とそう言った。
ロイだけじゃない。聖女ヒナが活躍し、彼女が皇太子の寵愛を受ける2年後のこの帝国で、誰もがアリアを見て悪役姫と指をさすのだ。
それは小説に明記された既定路線。
「姫にも読めない未来があるようだ。それに今回は俺の勝ちです」
諦めて皇太子妃続投してくださいとロイはアリアに近づくと彼女のシャンパンゴールドの髪の上にとんっと何かを載せる。
「うーん、姫には王冠よりティアラの方が似合いますね。今度仕立てましょうか」
姫はどんな宝石が好きですか? とキラキラした笑顔で聞いてくるロイに、アリアは一瞬ぽかんとした表情を浮かべたあと、真っ赤になって、
「ちょっ、殿下。何してくれてるんですかっ!?」
と、ものすごく怒った口調でそう言った。
「雑っ!! 王冠イベントすっごい大事なシーンなのに、何悪役姫の頭に載せてんの!?」
王冠イベントはこの小説の神回トキメキポイントですけどっ!! と小説のファンだった2回目の人生を思い出し、アリアは叫ぶ。
「手軽に載せるなーー!! もう! もう!! 乙女の夢壊れるでしょ? 2年後にやってよ。運命の相手に!! できたらもう少しロマンチックに」
小説の大筋変える気はさらさらないんだって、っと内心で付け足しつつ不満気にそう述べるアリアにロイは口元を抑えて笑う。
「もう、私は怒っているんです。何笑ってるんですか!!」
「いや、うん。俺、王冠載せただけでなんで姫にこんなに怒られてるんだろうなって」
悪役姫だと主張する彼女は、大嫌いだと宣った相手の怪我の心配をし、離縁したい相手の前で泣きそうな顔をしたり、安堵したり、笑ったり、怒ったり、こんなに短時間でよくもまぁ素直にくるくると表情を変えられるものだとロイは感心するとともにアリアへの興味が増す。
おそらく、本来の彼女はこっちなのだろう。
何がアリアを頑なにしているのかは、今時点では分からないけれど。
「分かりました。2年後にやります。もう少しロマンチックに、ね」
載せる相手はアリアが思う"運命"とは限らないが、と内心で付け足したロイは、ひょいっと王冠をアリアの頭から取り上げて回収する。
「……そう、ですよ。2年後に優勝して殿下の傍らにいる最愛の方に捧げてくださいませ」
ロイの手元に回収された王冠を見ながらちょっと残念だなんて思ってしまった自分を嗜めて、ロイから視線を逸らしたアリアは自分に言い聞かせるように、ロイにそう告げた。
そんなアリアを見たロイはアリアの手を取って、その上に静かに王冠を載せる。
「なので、2年後までコレは姫に預けておきます」
「はい? いりませんよっ」
ロイに王冠を預けられる意図が分からず、押し返そうとしたアリアに、
「あげるとは言ってない。物欲しそうな顔で王冠を見ている姫に貸してあげるだけです」
ロイはそう言って揶揄うような目をして笑った。
「なっ!」
そんなロイにアリアが反論の言葉を紡ぐより早く、
「あまり姫の負担になってもいけないので、今日は引き上げます。続きはまた明日改めて」
ロイはそう言い残して颯爽と去っていく。
「もう、なんなのよ!」
パタンと閉じた部屋のドアを見つめてつぶやくアリアは、手元に残った王冠に視線を落とす。
「……そんなに、物欲しそうな顔……してたかしら?」
アリアは周りに誰もいない事を確かめてから、
「今だけ。ちょっとだけ。ちゃんと、返すから」
頬に感じる引かない熱と早くなった心音を沈めるようにきゅっと王冠を大事そうに胸に抱きしめた。