人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する

38.悪役姫は、ヒロインの登場を待ち望む。

 外に出てからしばらく歩いたのちにたどり着いたそこは、大きな木と広い湖がある見晴らしの良い空間だった。

「アリア、ここに寝転んで上見てみな」

 シートをひいた上にコロンと素直に寝転んだアリアは視界いっぱいに広がる星空に息を呑む。
 ロイはアリアの前に指で枠を作り、

「両手に載り切れないくらいの星だろ? そこの湖に映ってるのも全部、アリアにやろう」

 と笑った。

「この湖って」

「ちょうど神殿の真裏だな。あっちの奥の方に見えているのがそれ。誰も来ないから穴場なんだ」

 アリアはびっくりして淡いピンク色の瞳を瞬かせる。
 この湖を表から見た事は何度もあるし、小説の挿絵でもコミックスでも何度となく見返したので知っている。

「こんな場所があったなんて」

 アリアは驚いた声でそう口にする。
 ここは時渡りの乙女聖女ヒナが異世界から転移して来てロイと初めて出会う場所、のちょうど真裏に位置するところになるのかとアリアは脳内データを照合する。大分遠いが、これは舞台裏から見た光景なのだろう。

「ひとりで何か考えたい時、いつもここに来ていた。静かだし、星も綺麗に見えるしな」

 ロイはアリアの隣に寝転んで、星と星を線で結ぶ。

「ここは、人払いしてあって許可した人間しか立ち入れないように魔術式組んでる完全に俺のプライベートな場所なんだけどね。アリアは好きに来ていいよ」

 そう言ってアリアの手首に琥珀色の石のついたブレスレットを嵌めた。

「転移魔法組んであるから、アリアが望めば立ち入れる」

 城内にいる時限定だけど、と静かに話しながら、ロイはそのままアリアの指に1本ずつ指を絡めて優しく手を握った。

「どうして、そんな大事な場所に私を入れてくれるのですか?」

 アリアは星空から隣に視線を移して、夜空を見上げるロイに問いかける。

「どうしてだと思う?」

 問いかけを問いかけで返して来たロイがアリアの方を向く。
 すぐ近い位置で視線が交わり、その琥珀色の瞳が優しくて、アリアはそれ以上言葉を紡げなくなる。
< 87 / 183 >

この作品をシェア

pagetop