君を忘れてしまう前に
あの2人は付き合うだろうと思っていたけど、まさかそれが目の前で現実になるなんて。
心臓が見えないなにかに締めつけられているように痛い。
唇も、喉の奥も、肩も、足も。
サラとの思い出もすべてがギリギリと締めつけられて痛かった。
がむしゃらになって走るわたしの頭上では、おぼろげな光を放つ星が淡く散りばめられている。
最後に2人で一緒に歩いたあの日の夜空と同じだった。
――同じなのに。
ピタリと足を止めると、はあはあ、と息が上がり肩が大きく上下する。
馬鹿みたいだ。
こんなに動揺して、わたしは馬鹿みたいだ。
泣いてもどうしようもないのに。
分かっていたことなのに。
夜空を仰ぎ見た途端、目尻から大粒の熱い涙がこぼれ落ち、思いのつまった小さな星がぼんやりと滲んだ。
きっとサラはあの後、香音さんを抱きしめたんだろう。
そしてあの優しい熱を帯びた大きな手で、香音さんの心も一緒に丸ごと包み込んだんだろう。
ついこの間、サラに掴まれた手首を自分で握る。
あの熱は今日から香音さんのものになった。
いや、違う。元から香音さんのものだった。
少し冷たく見える瞳も、穏やかな声も、ちょっと意地悪な笑顔も。
わたしが好きなサラは、全部、香音さんのものだった。
これ以上になく、息が苦しい。
このむせ返るような思いを、わたしはどう乗り越えたらいいんだろう。
大切にしていた恋が本当の終わりを迎えた瞬間だった。