君を忘れてしまう前に

 普段はあまり使われていない校舎なのか、老朽化して寂れた廊下のあちこちにホコリの塊が落ちていている。
 こんな場所にサラがいるとは思えないけど、他に手がかりがないから仕方なく女の子達の後をついていく。

「この教室に入って行ったと思うんですけど。いるかな?」

 女の子達に促され、古びたドアノブをひねる。
 立てつけが悪いらしく、力を入れてドアを押すとギギ、と不快な音を立てた。
 教室内は薄暗く、ホコリ臭い。
 廊下から中を覗き込み「サラ?」と呼びかけてみたけど返事はなかった。
 室内に入ろうか迷っていると、突然後ろから、どん、と背中を押される。
 弾みで前に倒れそうになりながら教室の中に入った途端、バタンと勢いよくドアが閉められ、室内が真っ暗になった。
 慌ててドアノブをひねろうとしたけど、鍵がかかっているのかびくともしない。

「開けて!」
「すみませーん! 間違ってドア閉めちゃいました。ここのドア壊れてるんで、先生呼んできますね。来るか分かんないですけどぉ」

 女の子達が教室の外で笑っている。

「サラさんとか和馬くんとか、ほんと調子乗んなこいつ」
「歌もギターもド下手らしいよ。この間の学内コンサートの中間発表もヤバかったって聞いた。よくあんなので出れるよなって」
「このままでよくね? コンサートに出られなくても誰も困んないよ」

 女の子達の話し声がどんどん小さくなり、けらけらと甲高い笑い声だけが廊下中に響き渡った。
 その声に縋るように勢いよくドアを叩く。

「ま、待って………! 出して、お願い!」

 何度も精一杯、叫んだけど女の子達が帰ってくることはなかった。
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