君を忘れてしまう前に
「1年の時に仲よくなってから、どんなことにも一生懸命な仁花にどんどん惹かれていった。気がつけば、仁花のことを目で追ってた。仁花はおれのこと、友達だと思ってるかもしれないけど。好きだよ、仁花。おれは、前からずっと好きだった」
はくはくと息が漏れる。
落ち着かないといけないのに、どんどん呼吸が乱れていく。
「違、わ、わたしも。わたしもだよ、サラ。わたしもサラのことがずっと好きだった。わたしの中にはずっとサラしかいなかった……!」
サラに腕を引っ張られる。
流れのままにサラの胸に飛び込み、首筋に顔を埋めた。
「え、まじで……?」
「ほんとだよ。こんな冗談言うわけないじゃん」
知らない間に背中に回っていた腕に力が入る。
サラの胸から伝わる鼓動がとても早い。
わたしと同じだと知って嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「嬉しすぎて溶けそう。やば」
「わたしも」
笑い合いながらサラの背中に腕を伸ばすと、わたしを抱きしめる力がまた強くなった。
わたし達は同じ気持ちだと実感して心地がいい。
顔を上げると、そこには潤んだサラの瞳があった。
「キスしたい、いい?」
「……いいよ」
少し照れたように笑ったサラの指が、そっとわたしの瞼に触れる。
導かれるまま瞼を閉じた瞬間、ふわりと唇が重なって、落ち着いたはずのわたしの鼓動がトクトクとまた少し早くなった。