飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 あぁ、もう、なんで……っ
 

「離してください!」


 こんなことしてる場合じゃないのに!


 私は力一杯男の人を押す。


「あっはは! 効かない効かない♪」

「っ」


 (しん)、どこに行っちゃったの?

 もう会えないなんてこと、ないよね

 今日、いいことがあったんだよ

 友達ができたんだよ

 (しん)の言う通り『仲良くなりたいから話そう』って言ったら、名前で呼んでくれる友達ができたんだよ

 今日あった嬉しかったこと、悲しかったこと

 一番に、(しん)に伝えたいのに……!



「どこ行っちゃったの、(しん)……っ」
 


 悔しさで涙が溢れはじめる。


「え? なになに? なんか言ったー?」


 釣り目の男の人が私の肩を抱いて顔をグッと寄せる。


「っ、やだ……!」

「えー? あらっ! 泣いてるし! ちょっとー俺ら悪いことしてるみたいじゃーん」


 男の人が面白おかしく言うので、周囲はじゃれ合ってるだけだと勘違いしてるのか、必死にもがく私を助けてくれる様子はない。
 

「泣き顔もかわいい~! やさしいお兄ちゃんたちが癒してあげるよ~」



 やだ

 助けて

 助けて、(しん)

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