飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 そのとき、



「⁉︎ イッテェ‼」



 右側にいた男の人が勢いよく私から手を離して、前方によろけながら足を押さえた。

 
「⁉ いった! なんだ⁉」


 続けて左側にいた人も苦痛に顔を歪めて私から離れる。

 次の瞬間、私の目の前に小さな体が軽やかに着地した。

 涙目で振り返った男の人が「あ!」と声をあげて指さす。


「こいつ‼」

「ッシャー‼」


 アメリカンショートヘアーの猫が、私の前に立って男の人たちを威嚇していた。


(しん)……!」


 本当に、助けに来てくれた……!


 小さな体の(しん)は私の方を振り返ることなく、威嚇しながら男の人たちににじり寄る。

 身体中の毛を逆立たせ、フーッ!フーッ!と怒りを溢れさせている。

 釣り目の男の人が少し後ずさりながら立ち上がった。


「っだよ、またお前かよ!」


 (しん)は低く唸って、もう一度噛みつこうと駆け出した。


「っ! おいっ、逃げるぞ‼」

「え⁉ 待てよ!」

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