飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 男の人たちが全力疾走するのを、(しん)はしばらく息を荒げて体を揺らしながら見送ると、振り返った。


「ナァーーオ」

「「!」」


 今の鳴き声は、(しん)じゃない。

 どこからかやってきた大きな体の野良猫。

 (しん)の倍はありそうで、その目は(しん)のことをまっすぐにとらえている。


「やべ」


 (しん)が小さく呟いて少し後ろに下がった。


「走れ! 凛!」

「えっ」

「ナオォーーン!」


 瞬く間に走り出した(しん)を追いかけるようにして、その野良猫もすごい勢いで走り出した。


「⁉ まっ、待って!」


 私も慌ててその後を追いかけ始めた。






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