飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

高嶺の花ができるまで

 放課後。

 私は部活に行く生徒たちに紛れて下駄箱で靴に履き替え、グラウンド横を抜けて校門へ向かう。
  
 
 『かわいー』事件からちょっと時間を置いた今、私は少し冷静になっていた。

 夏宮くんは、コミュ力おばけ。

 もしかしたら夏宮くんは女の子との距離感が極端に近い人で、色んな女の子に無自覚に同じようなことしてるんじゃないかな。

 だとしたら、あれだけモテるのも納得がいく。

 あんなことされたらどんな女の子だって恋に落ちちゃう。

 あぶなかった、私もうっかりフォーリンラブしちゃうところだった……!
 
 学校の校門を出てしばらく歩き、周りにほかの生徒がいなくなったのを確認した私はひとり、ため息をついた。

 疲労がどっと押し寄せる。

 ……よし、今日の夕飯は簡単にしちゃおう。

 私は通学路にあるお母さんだらけのスーパーの中へ、セーラー服姿で乗り込んだ。

 安くなっていた野菜、明日の朝食べるパンと牛乳、それからパスタソースを入れる。

 そのほかに無くなりそうな消耗品を追加して、会計を済ませて店を出る。

 家まではものの五分ほどで到着して、私は鍵を取り出そうと鞄のポケットを漁った。

 ヴヴッ。

 そのとき、ポケットにあったスマホが振動して画面を光らせた。

 ……あ。彩人(あやと)くんからメッセージだ。

 
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