飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 ――ごめんね猫ちゃん きっと君がいたら寂しくないんだろうけど

 自分の失言を思い出して顔が熱くなる私を、夏宮くんは嬉しそうに見る。

「俺ちゃんとトイレできるし、その辺の犬猫よりおりこうさんだよ?なんとかして普通の人間に戻る方法探すから、それまで。ね?」

「いや、でも……っ」

 男の子を家に住まわせるなんて……!

「……凛」

「!」

 その時、いつも夏宮くんがまとってる気だるげな空気が消えて、ピンと張りつめたものに変わった。

 それまで私の足を挟んでいた夏宮くんの足が移動して、ふくらはぎをふくらはぎで挟むようにして足が絡まる。

「な、夏宮くん……?」

 その肌の密着具合に、心臓がドクドクとどうしようもなく高鳴る。

 そして夏宮くんが、私のより少し大きな男の子らしい手で私の手を取った。

「……!」

 指先から熱が発火して、全身をかけめぐる。

 そして夏宮くんは、私の目をまっすぐにとらえたまま、


「俺のこと、捨てるの……?」


 小首を傾げた。


「……っ」


 あまりの可愛さに、私の頭の中でパンッ!となにかが破裂した。

 
 ……えっ、

 これを断れる人、いますか?

 何も返せない私に、夏宮くんが綺麗な顔をふにゃっと崩して笑う。


「決まり。とりあえずおかわりちょーだい?ご主人さま」


 そう言ってお茶碗を持ち上げる夏宮くんの、その笑顔の爽やかさがいっそ怖かった。

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