Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~
「上の棚のものを下に移した方が良さそうだな」


とるのに邪魔だと思って棚の真下から避けようとしたが、恭介さんの2本の腕が壁のように通せんぼうする。


向かい合った私をじっと見つめた後、背伸びをして棚の上に腕を伸ばす。挟まれた私は動けず、固まる。


皿を持った彼が元々近かった顔の距離をずいと縮めた。


「顔真っ赤だけどどうした?」


「……わかってるくせに」


頭上で控えめな笑い声が聞こえた。目を細めてムッと怒っている表情を作る。


「やっぱり上棚のものはそのままにしておこう」


いつまでもお皿を受け取らない私にお皿を押し付けると同時に唇にキスをする。短いリップ音が鳴って、颯爽と彼はサラダを作りに戻る。


この人、人間に戻ってから今まで以上に甘くなったけどそれに比例して意地悪になった。ボソボソと文句を言う私に彼がこっそり笑っていたのは全然気づいてなかった。


映画を見ながら夜ご飯を食べた。あっという間の2時間。食器を洗い終わった私は先にケーキと紅茶を運んで行った恭介さんの部屋に向かう。


なんと彼の部屋にちゃんと正式に入るのは初めて。前に入った、というか侵入した時は暗くてあまり内装は見えなかった。
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