【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
「来るなッ!」
 ミーティアが叫んだ。

 彼女の足元から突如として、黒い(いばら)が生い茂る。
 もの凄い勢いで増殖するツタが、走るように床を這い回る。

 誰かが「ぎゃあっ」と叫んだ。

「い、異能が使えない! 盗まれた! 俺の力がっ!」
「きゃああっ、やめて! 盗らないで!」
 
 茨に触れると異能を盗まれるらしい。あちこちで、雄叫びや悲鳴が上がる。

「シリウスッ!」

 流れに逆らい、私は人波をかき分けて進む。玉座に近付くと、陛下を守り剣を振るうシリウスの姿が見えた。

「陛下、玉座の後ろの通路からお逃げ下さい。近衛兵、陛下をお守りしろ! 早く!」

 斬ったそばから茨が再生する。
 
(私から盗んだ癒しの異能で再生させているんだ――)

「アハははっ! なぁんだ、最初からこうすれば良かったんだぁ。王妃なんてまどろっこしいことしないで、あたしが王になればいいんだわ!あはははは!」
 
 ミーティアが高笑いしながら、右手を上げる。指をパチンと鳴らすと、今度は炎柱が騎士達に襲いかかった。

 茨に守られ、あらゆる力を繰り出す彼女はまさに『魔女』。
< 213 / 226 >

この作品をシェア

pagetop