ビールで乾杯
時計の針が零時を指すと、着信音が鳴った。
「真理、誕生日おめでとう」
佑都の優しい声が耳に届く。誕生日には必ずこうしてくれる。
うとうとしていたのか、声が少し掠れて聞こえる。
「ありがとう」
「明日……てかもう今日だけど、十一時にF駅で待ってるから」
「うん。楽しみに待ってるね」
そう返した真理は、緊張と不安を抱えたまま朝を迎えた。
F駅の階段を半分ほど下りると、改札の向こうで待つ佑都の姿が目に飛び込んできた。真理は逸る気持ちを抑え、ヒールの足元を気にしながら階段を下りた。
佑都が微笑み、ゆっくりと改札に近付いてきた。
その表情を見た途端、ここ数日の鬱々とした気分が吹き飛び、好きだ、という感情が溢れ出した。
改札を抜けると、真理は堪らず佑都の胸に飛び込んだ。
「真理、どうした!?」
受け止めた佑都が至極驚いた声を出した。
真理が普段外では絶対にしないことだからだろう。
「佑君……会いたかったぁ」
少し頬を赤らめ、満更でもない表情を浮かべている佑都に、真理は満面の笑みを向けた。
「昼飯にはまだ早いし、先に真理のプレゼント買ってから、何か食おうか」
「ああ……今年は何もいらないよ」
「え?」
「佑君にはもういろんな物貰ったし、誕生日を一緒に過ごせるだけで十分」
「何だよそれ……可愛すぎんだろお前」
佑都は少し困ったように笑ったが、遠慮している訳ではなく、それが真理の本心だった。それに、真理が今本当に欲しいのは、プレゼントではなくて、たった二文字の言葉だ。
『結婚』の二文字。
「お腹すいちゃったな。近くに美味しいパスタの店あったよね? 前に佑君と一緒に行ったとこ。ちょっと早いけどお昼にしない?」
「あ、おう……」
普段はリードする佑都の腕に手を絡め、真理は少し強引に佑都を促した。
食事中も、まだプレゼントのことを気にする佑都に、「本当にいいの」ときっぱり断った真理は、「その代わり」と続けた。
「何?」
「特別な一日にしたい」
「おう、任しとけ」
即答した佑都は、何故か色気を含んだ悪戯な笑みを浮かべている。
勘違いしているようだ。
「真理、誕生日おめでとう」
佑都の優しい声が耳に届く。誕生日には必ずこうしてくれる。
うとうとしていたのか、声が少し掠れて聞こえる。
「ありがとう」
「明日……てかもう今日だけど、十一時にF駅で待ってるから」
「うん。楽しみに待ってるね」
そう返した真理は、緊張と不安を抱えたまま朝を迎えた。
F駅の階段を半分ほど下りると、改札の向こうで待つ佑都の姿が目に飛び込んできた。真理は逸る気持ちを抑え、ヒールの足元を気にしながら階段を下りた。
佑都が微笑み、ゆっくりと改札に近付いてきた。
その表情を見た途端、ここ数日の鬱々とした気分が吹き飛び、好きだ、という感情が溢れ出した。
改札を抜けると、真理は堪らず佑都の胸に飛び込んだ。
「真理、どうした!?」
受け止めた佑都が至極驚いた声を出した。
真理が普段外では絶対にしないことだからだろう。
「佑君……会いたかったぁ」
少し頬を赤らめ、満更でもない表情を浮かべている佑都に、真理は満面の笑みを向けた。
「昼飯にはまだ早いし、先に真理のプレゼント買ってから、何か食おうか」
「ああ……今年は何もいらないよ」
「え?」
「佑君にはもういろんな物貰ったし、誕生日を一緒に過ごせるだけで十分」
「何だよそれ……可愛すぎんだろお前」
佑都は少し困ったように笑ったが、遠慮している訳ではなく、それが真理の本心だった。それに、真理が今本当に欲しいのは、プレゼントではなくて、たった二文字の言葉だ。
『結婚』の二文字。
「お腹すいちゃったな。近くに美味しいパスタの店あったよね? 前に佑君と一緒に行ったとこ。ちょっと早いけどお昼にしない?」
「あ、おう……」
普段はリードする佑都の腕に手を絡め、真理は少し強引に佑都を促した。
食事中も、まだプレゼントのことを気にする佑都に、「本当にいいの」ときっぱり断った真理は、「その代わり」と続けた。
「何?」
「特別な一日にしたい」
「おう、任しとけ」
即答した佑都は、何故か色気を含んだ悪戯な笑みを浮かべている。
勘違いしているようだ。