ビールで乾杯
食事を終え、映画館に向かった。
映画館に二人で行くことはあまりなかった。好きなジャンルが違うからだ。佑都はアクション映画や推理ものを好む。それは個人の自由で、たとえ恋人同士であっても互いに共感を求めることもしないし、押し付けもしない。それでいいと、真理は思う。
だが、今日は誕生日ということで、「真理が観たいものにしよう」と佑都が言った。
もちろん、ラブロマンスだ。
倦怠期を乗り越えることが出来ずに別れたカップルが再会し、恋の炎が再燃するというストーリーで、映画のラストは想像できた。それをわかっていて、今日の日に合わせて真理が選んだものだった。
場内が暗くなると同時に、ふと佑都との初デートの記憶が甦り、真理の胸が高鳴る。佑都と初めて手を繋いだのも、キスをしたのも、映画館だったのだ。
背もたれがしっくりこないのか、そわそわして何度も座り直す佑都に目を向けると、佑都の右手が肘置きを越えて、真理の左手にふわりと被さった。まるで、今自分が考えていたことを見透かされたようで真理の頬が熱くなる。
佑都の指が絡まり、思わずキスをねだるように顔を寄せると、佑都が焦らすように額を擦り付けてきた。堪えきれず、真理は自ら唇を押し付けた。
それから映画が終わるまでの二時間半、佑都と何度も唇を重ねた。
「こういうのあんま観ねえけど、たまにはいいな」
「付き合ってくれてありがとう」
「また映画デートしような」
映画館を出た佑都はそう言うと、ちらっと視線を合わせ、照れたように笑った。
「たまにはいい」と言ったのが、映画の内容ではないような気がしたのは、真理が前半部分とラストシーンしか覚えていないからだ。きっと、佑都もそうに違いない。
映画はやはりハッピーエンドで、幸せそうに微笑む二人の結婚式シーンで締め括られた。
このまま映画のラストと同じように、筋書き通りに進めばいいのに、と思わず繋いだ手に力が入ってしまう。
「爪立てんな。猫みたいに」
ふっと笑った佑都に茶化され、必死過ぎる自分に苦笑した。
映画館に二人で行くことはあまりなかった。好きなジャンルが違うからだ。佑都はアクション映画や推理ものを好む。それは個人の自由で、たとえ恋人同士であっても互いに共感を求めることもしないし、押し付けもしない。それでいいと、真理は思う。
だが、今日は誕生日ということで、「真理が観たいものにしよう」と佑都が言った。
もちろん、ラブロマンスだ。
倦怠期を乗り越えることが出来ずに別れたカップルが再会し、恋の炎が再燃するというストーリーで、映画のラストは想像できた。それをわかっていて、今日の日に合わせて真理が選んだものだった。
場内が暗くなると同時に、ふと佑都との初デートの記憶が甦り、真理の胸が高鳴る。佑都と初めて手を繋いだのも、キスをしたのも、映画館だったのだ。
背もたれがしっくりこないのか、そわそわして何度も座り直す佑都に目を向けると、佑都の右手が肘置きを越えて、真理の左手にふわりと被さった。まるで、今自分が考えていたことを見透かされたようで真理の頬が熱くなる。
佑都の指が絡まり、思わずキスをねだるように顔を寄せると、佑都が焦らすように額を擦り付けてきた。堪えきれず、真理は自ら唇を押し付けた。
それから映画が終わるまでの二時間半、佑都と何度も唇を重ねた。
「こういうのあんま観ねえけど、たまにはいいな」
「付き合ってくれてありがとう」
「また映画デートしような」
映画館を出た佑都はそう言うと、ちらっと視線を合わせ、照れたように笑った。
「たまにはいい」と言ったのが、映画の内容ではないような気がしたのは、真理が前半部分とラストシーンしか覚えていないからだ。きっと、佑都もそうに違いない。
映画はやはりハッピーエンドで、幸せそうに微笑む二人の結婚式シーンで締め括られた。
このまま映画のラストと同じように、筋書き通りに進めばいいのに、と思わず繋いだ手に力が入ってしまう。
「爪立てんな。猫みたいに」
ふっと笑った佑都に茶化され、必死過ぎる自分に苦笑した。