ビールで乾杯
 六杯目のジョッキを空にした佑都とガッツリ視線が絡んで、真理は固まった。  
 佑都の瞳はトロンとして瞬きもゆっくりだ。

「なぁ、真理ぃ」

 甘えるような、ゆったりとした口調で佑都が呼ぶ。

「いつになったら俺と結婚してくれんのぉ?」
「え?」

 真理の瞬きが止まらない。

「なぁ……いつ? いつか言ってくれるまで、今日はお前帰さねえからぁ」
「え……きゅ、急にそんなこと言われても……」 

 甘い口調はアルコールのせいだろう。
 佑都と同じペースで飲んでいたが、なかなか話の糸口が掴めないまま緊張で全く酔えず、真理の頭は冴え渡っていた。
 願ったり叶ったりのはずなのだが、想像していたシチュエーションとかけ離れ過ぎていて真理は困惑した。
 
「真理ぃ、俺のことマジで好きなのかよぉ?」

 佑都の口からそんな言葉が飛び出すことなどあり得ない。酔っ払いの戯れ言だろうか。
 佑都がこれ程に酔ってしまうのが想定外だった。

 冗談? 本気?

 どう捉えればいいのかわからず、真理の心にいろんな感情が溢れる。

「もう待てねえんだよ!」

 不意に声を荒げたとどめのひと言に、真理の瞳から雫が零れ落ちた。

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