ビールで乾杯
「もう全部来たんじゃねえの? 注文したもん」
「ああ……うん、そうだね」
「じゃあこっち来いよ」
「え?」

 真理が頬を紅潮させると、「何乙女みてえな顔してんだよ」と茶化しながら、佑都は真理をそばに呼び寄せた。

「今日お前どうした? 何かあんだろ」

 佑都が瞳の奥を覗き込む。
 全く気付いていないと思っていた佑都は、いつもとどこか違う真理の様子に気付いていたようだが、さすがにこのタイミングでは、何と言えばいいのかわからない。

「えっ、な、何? 何もないよ」

 動揺している真理の様子を見ていた佑都が、ふっと笑った。

「お前さぁ、さっきからずっと……眉毛半分ないけど」
「えぇっ!? ちょっ、やだぁ、言ってよ! 映画館で佑君が頭撫で回すからじゃん」

 真理が慌てて化粧ポーチを取ろうと腰を上げると、佑都に腕を掴まれ引き戻された。

「今更、何恥ずかしがってんだよ。お前のどんな姿見たって、嫌いになんかなんねえよ」

 今度は真理の髪を撫で頬に触れ、唇を寄せた。

「真理、ビール頼んで」
「あ、うん」

 インターホンでビールを二つ注文すると、真理は元の席に戻った。

< 8 / 12 >

この作品をシェア

pagetop