彼は溺愛モンスター

楓くんは“男の子”

楓くんも学校生活に慣れてきて、日常が戻ってきたある日のこと。

私、サチカ、楓くんの三人で学校から帰っていた。

「ばいばーい」

一人だけ家の方向が違うサチカとは、すぐにバイバイになってしまった。

実は楓くん、今はお隣さんではないけど、ご近所さんなんだよ。だから今でも簡単に行き来できる。

ドンッ

私と誰かがぶつかる。

「わっ、ごめんなさ……ヒィッ!!」

思わず悲鳴が出てしまった。
なぜなら、その人が……、

「おい、おめぇ、誰にぶつかってんのかわかってんのかよ」

金髪でタトゥーの入った“ヤンキー”だったから……!!

どどどどどうしよう!

「あん? 嬢ちゃんが身体で払ってくれんのか? おん?」

私は顔を青ざめさせて、首をブンブンと横に振る。
ヤンキーは私のことをジロジロと見る。

嫌……っ。

ブルブルと肩を震わせていると、楓くんが私を庇うように、私とヤンキーの間に立ちはだかった。

「おまえこそ、“俺”の“イヨ”になにしてんだよ」

楓くんはすごく怖い。その目つきも、オーラも。本気で怒っているんだ……!

「……っ、今回は見逃してやるよっ」

楓くんのオーラに怖気付いたのか、ヤンキーは去っていく。

「大丈夫? イヨちゃん」

楓くんが私の肩を掴んで、離さない。心配そうな瞳で、私を覗く。彼の瞳には……わっ、私が映っている……!

本当に、“あの”楓くん––––……?

楓くんは普段、自分のことを“僕”っていう。
それに私のことも“イヨちゃん”って呼ぶ。
しかも……、「『俺の』イヨ」って……!

私は怖いのかドキドキなのかわからないけれど、心臓がバクバクしてる。痛いくらいに。

「大丈夫……だよ」

震える声で言った。
すると、楓くんはニコッと笑って。

「それならいいんだけど。じゃあ、行こっか」

と言って、私の手を引っ張って行く。

横から見た彼の顔が、なんだかいつもよりキラキラして見えて。

「見て! 夕陽が綺麗だよ!」

彼がほめた夕陽も、私の目には入らなくて。
だって––––。

彼の横顔から、私は、目を離せなくなってしまったから……。
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