23時のミャーの大冒険
──『ミャーン』
──『ニャーン、ニャーン』
「嘘っ……」
美弥が口元を覆うと目をぱちくりさせている。
バーのテラスには二匹の猫が顔を寄せ合いながら、楽しく談笑している。
「颯……あれってミャーのお友達、かな?」
「明らか女だろっ」
「えぇっ!」
(あんなに顔突き合わせてイチャついてんのにただのお友達なワケねぇだろ……)
ミャーが隣の彼女に毛繕いを始める。彼女は目を細めると気持ちよさそうにミャーの肩に額を寄せた。ミャーの恋人と思われる猫の毛並みは真っ白で左右で目の色が違うオッドアイだ。
(ちっ……いい女だからって見せつけやがって)
「幸せそうだね」
美弥が俺の袖をツンと摘むと嬉しそうに俺を見上げて笑う。俺は慌てて瞬時に眉間の皺を消し去る。
「……そ、そうだな」
「うん、ほんと良かったよね。ミャー、恋人に会いにきてたんだね」
「あぁ。人騒がせなヤツだよな。ったく、いつのまに女作ったんだか」
「颯、あの猫ちゃん、ここのバーの看板猫ちゃんでルナちゃんっていうんだよ」
「ん?なんでそんなこと知ってんの?」
俺はさりげなく美弥の肩を抱いた。既にシャワーを終えているのか美弥からは石けんの甘い香りがする。
「今思えばね、ミャーとベーグル買いに来た時、カウンターの所にルナちゃんが寝転がってて、ミャーがかなり気にしてたから。たぶん……その時に一目惚れしたんじゃないかな?ふふ、見て颯。ミャー、完全に恋してる顔だね」