私のボディーガード君
まだ体調が完全に回復していなかったから、その日は早めに寝室に入った。
ベッドに横になり、目を閉じると浅羽の声が頭の中で響いた。

――妃奈子さん、倉田浩介って名前に聞き覚えある?
――倉田浩介という男が22年前に妃奈子さんを誘拐した男らしい。

私を誘拐した男……。

考えたくないのに考えてしまう。

12歳の私を誘拐した男。

――佐伯妃奈子ちゃん?

今思うと、男の声は優しい感じだった。
男は私に「ごめんね」と言っていた気がする。

何に対して謝っていたのか思い出せない。
男と過ごした部屋は普通の家みたいだった。

あそこはどこだったんだろう?
そして男はどうなったんだろう?
私はどうやって助けられたんだろう?

――妃奈子、忘れなさい。忘れるのよ。

これは母の声。
必死に母は私に忘れるように言い聞かせていた。

ダメだ。頭が痛い。
考える事を強制的に止められているみたいに頭痛が酷くなってくる。

それに訳のわからない不安が胸を締め付ける。どうしてこんなに不安なんだろう。私は何を恐れているの?

ダメだ。眠れない。

ベッドから起き上がって、水を飲みに一階に降りた。
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