私のボディーガード君
「わかっています」

1階のリビングドアに触れた時、三田村君の低い声が聞えて来て、思わずドアの前で立ち止まった。

すりガラス越しに明かりが見える。三田村君だけではなく、誰かの気配も感じる。

「三田村君、くれぐれも例の件は妃奈子さんの耳に入れないようにお願いします」

ハスキーな声にハッとした。
秋山さんの声だ。

もう深夜1時になるのに、秋山さん、来ていたの?

「しかし、若林からの報告によると、妃奈子さんは倉田浩介の名前を聞いてしまったそうです。妃奈子さんに聞かれたらどうしたらいいですか?」

倉田浩介の名前を聞いた瞬間、ドキッとした。

「倉田浩介の事は聞かれても答えないようにして下さい」

何、この会話?
三田村君も秋山さんも倉田浩介を知っているの?

私に秘密って、どういう事?

「わかりました。妃奈子さんには秘密にしておきます」

ボーリングの玉を抱えたみたいに全身が重たくなる。

どんな事があっても三田村君は私の味方だと思っていたのに、秋山さんに言われたら秘密にするんだ。私に隠し事するんだ。

三田村君を信じて来たのに。

やっぱり三田村君は母の味方なんだ……。

そうだよね。三田村君の雇い主は佐伯洋子だものね。

秋山さんと三田村君が一番守りたいのは私ではなく、佐伯洋子……。

バカだな、私。当たり前の事を忘れていた。
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