私のボディーガード君
カチャン。若林さんが白いコーヒーカップを私と綾子さんの前に置き、「失礼します」と言って、パーティションの外に出て行った。

淹れたばかりのコーヒーから立ち上る湯気越しに綾子さんを見る。
先日は鮮やかな桜色のワンピースが印象的だったけど、今日はミッドナイトブルーのワンピースで、大人びて見える。

年齢は確か三田村君と同じぐらいだったはずだが、丸顔の可愛らしい顔立ちをしているせいか、三田村君より幼く見える。

「あの」と、緊張したような声が響き、栗色の瞳がこちらを向く。
「佐伯妃奈子先生のファンなんです。サイン下さい」
恥ずかしそうに頬をピンクに染め、彼女はテーブルの上に『光源氏に聞く恋愛相談』を置いた。

何を言われるかと身構えていたので、少々気が緩む。

「どうぞ」
サラサラと目の前でサインしてあげると、綾子さんは目鼻立ちが整った顔を嬉しそうに綻ばせた。

私のサインで喜ぶなんて、可愛い子じゃないと思った時、「返して下さい」という低い声が鼓膜を通り過ぎた。
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