私のボディーガード君
秋山さんとの電話の後、三田村君が心配になった。私の振る舞いのせいで神宮寺家に呼び出される事になったらどうしよう。倉田浩介の事で秋山さんにも叱られているかもしれない。

三田村君はあのお嬢様の事をどう思っているんだろう? 実は三田村君もお嬢様の事が好きだったりはしないだろうか……。

三田村君を守るつもりで、ボディーガードの件は応じないと綾子さんを突っぱねたけど、最近の私たちは険悪で、三田村君が今週お休みをしているのも、もう私のボディーガードをしたくないからではないだろうか?

そう考えると私の振る舞いは勝手だったかもしれない。これ以上ない程、どよーんと落ち込んで、首が落ちる。ゴンっと派手な音を立てて、目の前のディスプレイにおでこをぶつけた。その拍子に机の上に積んであった資料が雪崩を起こし、バサバサと大きな音を立てて床に落ちた。

借りものの貴重な文献が……。
何をやっているんだろう。

「佐伯先生、大丈夫ですか?」
控えていた若林さんが慌てた様子で近くまで来る。

「う、うん。大丈夫」
落ちた本を拾い集めながら、ポタポタと涙が零れてくる。
ぶつけたおでこよりも胸が痛い。こんな自分が情けなくて堪らない。

三田村君の事を私の物だとお嬢様は言ったけど、私も同じように思っていた。
いつも傍にいてくれて、私の心配をしてくれる私だけの三田村君。

だから、秘密がある事が許せなかった。
倉田浩介の事、三友グループの御曹司だった事、元許嫁がいた事……。

知らない三田村君を知ってショックだったんだ。
< 138 / 210 >

この作品をシェア

pagetop