私のボディーガード君
綾子さんとお見合いをしたと言った浅羽の事が浮かんだ。

「まさか浅羽光平さんと?」
「ええ。一度はお断りしましたけど、いつまでも振り向いてくれない方を思うのは苦しいだろうと浅羽さんに言われて。ちゃんと話してみると、気遣いのできる優しい方で、私の事をいろいろと心配して下さって」

綾子さんがハッとしたように私を見た。

「なんで浅羽さんを知っているんですか?」

私と浅羽がつき合っていた事を知らなかったら、そう思うよね。

「ちょっとした知り合いなの。よく行く図書館で時々顔を合わせて」

浅羽と出会ったのは国会図書館だった。平安時代の資料を捜していたら偶然出会って、気づいたら食堂でお茶を飲む仲になっていた。彼はとても感じが良くて、話しやすかった。

「浅羽さんと知り合いだったんですか」

綾子さんがつまらなそうに言った。

「言っておきますけど、浅羽さんは渡しませんからね」

釘を刺すような目で見られた。
かなり浅羽にご執心なよう。

「浅羽さんとはただの知り合いよ。綾子さんが心配するような関係にはならないから」

綾子さんがほっとしたような表情を浮かべた。

浅羽って女心を掴むのが上手なのかも。私と別れた後はうちの学生のゆみちゃんを虜にしていたし。

次は綾子さんか。ゆみちゃんとはどうなったんだろう? もう別れたのかな?
< 166 / 210 >

この作品をシェア

pagetop