私のボディーガード君
「佐伯先生、コーヒーどうぞ」

若林さんが机の上に淹れたてのコーヒーを置いてくれた。

「ねえ、若林さん、どうしてお嬢様が謝罪したって知っているの?」

三田村君にも昨日の事は話していないのに。
でも、お嬢様、三田村家から圧力がかかったみたいな事を言っていた……。

「もしかして三田村君にお嬢様と言い合いをした事話したの?」

机の前に立つ若林さんが頷いた。

「三田村に聞かれましたから、詳しく説明しておきました」

腑に落ちなかった突然の手のひら返しの理由がわかった。三田村君が三田村家に働きかけたのか。もうっ、三田村君、何も言わないんだから。

三田村君にお礼を言った方がいいのかな。

「三田村、綾子さんにはきちんと謝罪してもらうって言っていました。あまり感情的にならない男なのですが、かなり怒っていたようでした」

「そうなんだ」

社長の平謝りの様子からして、かなりの圧力が三田村家からかかったんだろうな。神宮寺製薬の社長を謝らせるなんて三田村家は凄いんだな。

今日は帰ったら三田村君に謝ろうかな。

「そうそう。言い忘れていましたが、今夜は三田村が留守なので、先生はご実家の方にお帰り下さい」

三田村君、いないんだ。
本当、何も言ってくれない。今朝、会った時に教えてくれてもいいのに。

「なんで三田村君帰って来ないの?」
「調査の為、東京を出ているそうです」
「何の調査?」
「さあ。そこまでは」
「東京を離れてどこに行ってるの?」
「栃木県だと言っていましたが」

栃木……。

あ! もしかして。

カタカタとキーボードを打って、神宮寺製薬のホームページを開く。研究所の住所を調べると栃木県日光市と住所が出ていた。

多分、ここに行ったんだ。昨夜、三田村君が熱心に読んでいた書類は神宮寺製薬に関するものだった。

一人で調べに行くなんてズルイ。
こうなったら私も。

「若林さん、今から出かけます」
「どちらへ?」
「栃木です」
< 171 / 210 >

この作品をシェア

pagetop