私のボディーガード君
その場所は廃墟のようだった。薄暗い建物の中を進み、広い部屋に出た。辺りには誰もいない。

「三田村君、どこ?」

ぐるぐると周りを見渡すと、スーツ姿の男性の背中が見えた。

「三田村君!」

背中に向かって走った。

「妃奈子さん」

背を向けていた三田村君が私の方を振り向いた。
やっぱり三田村君だった。ここにいたんだ。

「来るな!」

三田村君の怒鳴り声に足が止まる。
何よ。来るなだなんて偉そうに。

「妃奈子さん、危ない!」
三田村君が私に向かって走ってくる。

次の瞬間、銃声のような音が響いた。
三田村君が私に飛びついた。三田村君に抱えられたまま私は床に転がった。

三田村君の下敷きになり、起き上がろうとすると手に生温かい物が伝わってくる。

血だ。

「妃奈子さん、大丈夫ですか?」
「三田村君、血が」

私から出ているんじゃない。三田村君の脇腹から出ている。

「三田村君、怪我してるの?」
「これぐらい大丈夫ですよ。それより逃げて下さい」
「逃げる?」
「早く、逃げて」

気づくと銃を持った男が私たちの前に立っている。
三田村君が男に立ち向かう。その時、銃声が何発も響いた。

三田村君の背中が真っ赤に染まっていく。

「三田村君――!」
< 172 / 210 >

この作品をシェア

pagetop