私のボディーガード君
目を開けると、車の中だった。運転席には若林さんがいて、車を走らせている。

窓の外に流れる景色はまだ高速道路の中だった。

「先生、お目覚めになりましたか?」

後部座席に座っている私に向かって若林さんが声をかけた。

「ごめんなさい。眠ってしまって」

東北自動車道に入った辺りまでは覚えていた。
腕時計を見ると午後三時だった。最後に見た時よりも30分進んでいる。

ああ、そうか、今のは夢……。

「うなされていたようですが、大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫」

大丈夫と言いながらも、今見た夢が頭から離れず、冷や汗が出てくる。心臓も嫌な感じでドキドキしている。

夢とは言え、三田村君が撃たれるなんて……。
真っ赤に染まる背中を思い出すだけで、指先が震えそうになる。

あんなに怖い夢、もう二度と見たくない。

でも……。

私を庇って三田村君が命を落とす事も……。

嫌だ。三田村君があんな風に傷つくなんて。
私を庇って死ぬなんて許せない。

まだ自分が撃たれた方がいい。

「若林さん、もし私が危ない目に遭ったら、若林さんは盾になるの?」
「当然です。それが職務ですから」
「怖くないの?」
「怖くないように訓練を受けておりますから」
「死んじゃうかもしれないんだよ」
「警護対象者を死なせるよりマシです」
「三田村君も同じように思うの?」
「三田村は躊躇なく先生の盾になると思います。その覚悟ができている男ですから」

三田村君が私の盾になるなんて、やっぱり嫌。

いつも私を守るって三田村君は言ってくれるけど、初めて守られている事が嫌だと思う。
< 173 / 210 >

この作品をシェア

pagetop