私のボディーガード君
神宮寺製薬の研究所は山深い場所にあった。研究所の広い敷地内は整備された空間が広がり、大きな白い建物が二棟建っている。建物の傍まで車を走らせると、ゲートがあった。そこには警備員が立っていて、どこに行くのか聞かれる。

「研究所に行きたいんです。本社の秘書課の神宮寺綾子さんの使いで来ました」

一か八かで綾子さんの名前を出すと、「お嬢様の使いですか」と、警備員のおじさんは綾子さんを知っているようだった。

秘書課に配属になる前は綾子さんはここの研究所に勤めていたんだろうか。

綾子さんのおかげで問題なくゲートは通れた。
広い駐車場に車を停め、研究棟と書かれている建物に向かって若林さんと進む。

さて。後はどうしようか。

せっかくだから倉田浩介とチャイルドの事を調べたい。
倉田浩介がクビになったのが22年前だから、倉田の同期はもう50代ぐらいだろうか? それとももっと年上? なんとなくだけど、私を連れ去った時の倉田は30代から40代ぐらいだった気がする。

40代だったら倉田の同期はもう定年していそう。

「佐伯先生、どうしますか?」

立ち止まって考えていると、若林さんに聞かれた。

「とりあえず中に入って、チャイルドの事を知っている人を捜そう」

発売中止になったのが5年前なら、チャイルドを知っている人はいるだろう。

「わかりました」

若林さんが研究棟の正面玄関に立った時、向こうから歩いて来た人物に目が留まる。

ネイビースーツの長身男性。

三田村君だ!

「妃奈子さん、なんで……」

自動ドアを通って、こちらに来た三田村君が私を見て、眉を上げた。
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