私のボディーガード君
「妃奈子さん……!」
「ごめん、もう行って。高橋さんを待たせているんでしょ? 私は大丈夫だから」
「妃奈子さん、俺」と三田村君が言いかけた所で、三田村君のスマホが鳴った。電話がかかって来たよう。三田村君が私に視線を向けたまま受け答えをする。

「お待たせしてすみません。今行きます」

電話はすぐに切れた。

「高橋さんが待っているんでしょ?」
「はい」
申し訳なさそうな表情で三田村君が頷く。
「行って来て。私の分もしっかりと話を聞いてくるのよ」
「妃奈子さん、本当にお一人で大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。どこにも行かないから。ね」
トンと三田村君の胸を両手で押した。渋々という様子で三田村君がベッドから立ち上がる。

「妃奈子さん、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だって」
クスクス笑うと、三田村君が苦笑いを浮かべた。
「じゃあ、行ってきますね」
「行ってらっしゃい」

パタンと部屋のドアが閉まって一人になる。

スマホに手を伸ばして《《あの人》》のアドレスを表示した。
通話ボタンをタップすると、すぐに「もしもし」という声が出る。

「今から会いたいの」

私の誘いに電話の相手は驚いたように息を飲んだ。
< 180 / 210 >

この作品をシェア

pagetop