私のボディーガード君
抱き上げられたまま寝室の広いベッドに運ばれて、私の上に三田村君が覆いかぶさってくる。

「何度この瞬間を夢見た事か」

しみじみと言った三田村君が可笑しくて、ぷっと笑ってしまう。

「笑いごとじゃないですよ。俺がどんなに我慢していたか」
「我慢していたの?」
「我慢していました。妃奈子さんにキスをされてから特に辛かったです。あのキスの続きをしたいとずっと思っていました」

え? 私にキスされた? 
何の事? 

「キスって何?」

ガバッと起き上がると、三田村君が「本当に覚えていないんですか」と言って笑う。

「じゃあ、今から教えてあげます」

ぐいっと顎を掴まれると、端正な顔が近づいてくる。そして静かに唇が重なった。柔らかな感触の上唇と下唇が私を求めるように何度も口づける。キスされる度に好きだって気持ちが伝わってくるようだった。

寂しくて堪らなかった気持ちが幸せなものに変わる。熱い吐息も、絡み合う舌も、好きな人がくれるものは全部気持ちを満たしてくれる。触れあう度に胸がキュンとして、甘い気持ちが膨らんでいく。三田村君がくれるキスはなんて甘いんだろう。

「妃奈子さんを抱きたい。いいですか?」

熱を孕んだ黒い瞳に見つめられて、心臓が震えた。
いつもの優しい三田村君とは違う、男らしさを感じる表情だった。

「うん」

コクリと頷くと、逞しい腕に抱きしめられたままベッドに沈んだ。
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