私のボディーガード君
 花里さんの話によると、昨夜私は一人でカラオケ屋に来て、帰る時も一人だったそう。男の特徴を話したけど、花里さんはそういう男性に見覚えはないと言った。

 花里さんに聞くだけで、帰るのも悪かったので友美と一時間の利用でカラオケルームに入った。

「イケメン君と出会ったのはここだと思ったのにな」

 歌い終わった友美がため息をつく。
 40型の液晶テレビの画面に新曲の案内映像が流れ始めた。

「次の曲入ってないよ。ひな、歌わないの?」
「今日はそんな気分じゃないから」
「じゃあ、ガールズトークか。他に覚えてる事ないの?」

 テーブルの上のバスケットに入ったフライドポテトをつまみながら友美がこっちを見る。

 昨夜は二時間のアルコールの飲み放題でグラス10杯以上のお酒を飲んでいた事をお店に来て思い出せたけど、その先は覚えていない。

「全く覚えてない」
「情けないね。34の女が記憶がなくなる程飲むなんて。しかも一人でいる時に」
 反論できない。本当に酷い飲み方をしたものだ。

「男の人が親切な人で良かったよね。強姦魔とかだったら、ひなのバージン奪われていたよ。下手したら命まで失っていたかも」

 背筋がゾクッとした。
 着衣の乱れはなかったし、実は友美の言うように親切な人だったのかも。

「それで朝までひなについていてくれたんでしょ?」
「うん。私が手を放さなかったらしくて」

 友美がアイメイクで普段より大きくなった目を見開く。
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