私のボディーガード君
「俺、事件の後、ずっと自分には何ができるんだろうかって考えていました。実は警視庁に戻って来ないかという誘いも受けていて、もう一度SPの仕事をしようかとも思いました。だけど、俺がしたい事はそうじゃないんだって、浅羽に会って気づいたんです」

「浅羽に会ったの?」

「事件直後に一度だけ面会を。その時浅羽が言ってたんです。誰も傷つけない方法でチャイルドの事を世間に公表するべきだったって。妃奈子さんを巻き込んで本当に申し訳なかったって」

浅羽の事を思うと胸が痛くなる。何か力になれたんじゃないかって、今でも思う。

「浅羽が妃奈子さんを巻き込んだ事は許せなかったけど、神宮寺製薬がしたような事は見えていないだけで、世の中には沢山あるかもしれないと感じたんです。それで俺、政治家になって弱い立場の人を守りたいんです」

向けられた黒い瞳には揺るぎない決意を感じる。
私が落ち込んでいる間、弱い立場の人の為に何ができるか考えていたんだ。凄いな、三田村君。

「妃奈子さん、きっと沢山迷惑をかけてしまう事もあると思いますが、俺、政治家になってもいいですか?」

三田村君の決意を聞いて、自分がしたい事がやっとわかった。
私は弱い立場の人の為に頑張る三田村君を支えたい。

「どうせだったら総理大臣を目指す? そしたら私、ファーストレディーね」
「いいんですか!」
「いいよ。でも、三田村君が権力を持って、間違った事をした時はひっぱたくからね」
「はい。その時は叱って下さい。妃奈子さんが隣にいれば、俺、間違えませんから」
「これから忙しくなるね」
「そうですね。だから、一緒に暮らしませんか?」
「もう一緒に暮らしてるでしょ? ずっと三田村君の帰りを待っていたんだから」
「妃奈子さんの所に帰っていいんですか?」
「当たり前でしょ」

背伸びをして、頬にキスをすると、三田村君が嬉しそうに微笑んだ。まだまだ大変な事はありそうだけど、これから先の人生はずっと三田村君と一緒だ。

そう思ったら朝陽が薔薇色に見えた。

終わり
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