私のボディーガード君
 タクシー会社では新たな手掛かりを得る事ができず、男捜しはそこで終わった。

 悶々とした一週間が過ぎてクリスマスイブがやって来た。

 クリスマスイブの夜は銀座にある有機野菜を使ったフレンチレストランのお店を予約してあった。人気店で予約を取るのが難しかったけど、『光源氏に聞く恋愛相談』のコラムを連載している女性誌の編集長のツテで何とか予約を取ってもらった。

 ホテルのバーで惨めな別れ方をした彼と行くつもりだった。クリスマスデートに合わせてボルドー色の大人可愛いデザインのワンピースも用意して、美容院の予約もいれてあった。

 予定を変更するのも悔しくて一人でクリスマスディナーに出かける事にした。

 美容院で髪型を夜会巻きに作ってもらって、メイクもゴールドのアイシャドウを使った華やかメイクをしてもらってフレンチレストランに一人で向かった。

 クリスマスディナーに一人でレストランに行くなんて我ながら痛々しい。できれば友美にディナーの席を譲りたかった。でも、友美は旦那さんと長野にスキーに行く予定が入っていたから譲れなかったし、他に譲れる知り合いも、ディナーに誘う相手もいなかった。人望のなさを感じるけど、今日は落ち込まないって決めた。だって、せっかくのクリスマスイブだもの。

 タクシーの窓から見る銀座の街並みはシャンパンゴールド色に染まっていて美しい。遠くに見える歩行者天国を歩く家族連れや、カップルも何だか楽しそうで、こっちまでウキウキしてくる。

 完璧にお洒落をした私も綺麗だし。
 窓ガラスに映る自分に向かって微笑んでみる。

 うん。中々の美女よ。

 レストランは個室を予約してもらってるし、一人でいる事は気にならない。
 有機野菜を使ったフレンチが楽しみ。

 出迎えてくれたウェイトレスに予約の事を伝えると、困ったような表情でこっちを見た。

「二名様で、ご予約でございますよね?」
「そうですが」
「既に佐伯様のテーブルはご案内済みとなっておりますが」

 え?
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