私のボディーガード君
若林渚(わかばやしなぎさ)です。警視庁警備課2係に所属しております。階級は巡査部長であります」

玄関に立つ若林さんが、キリッとした敬礼をしながら挨拶をした。
若林さんが家の中に入って来た途端、空気もピリっと引き締まるようだった。

さすが現役の婦人警官。迫力がある。

体格のいい人を想像していたけど、黒パンツスーツ姿の若林さんは細くてスラッとしている。身長は164㎝の私と同じぐらい。ショートカットで、顔立ちはパッチリとした二重の目が印象的な美人だ。

「佐伯です。お世話になります」
「若林、頼んだぞ」
私の隣に立つスーツ姿の三田村君が言った。
お休みのはずなのに、三田村君がスーツ姿なのは意外だった。

三田村君は今日はどこに行くんだろう?

「大臣のお嬢さんの身は責任を持って私が守りますから、ご安心下さい」
若林さんが誓うように私を見る。

大臣のお嬢さんと言われて少しだけもやっとする。これでは若林さんに呼ばれる度に母を思い出してしまう。

「若林、大臣のお嬢さんではなく、佐伯妃奈子さんだ。佐伯先生、または佐伯さんか妃奈子さんとお呼びするように」

三田村君が私の気持ちを汲み取ってくれた。

「失礼しました。では、佐伯先生と呼ばせて頂きます」

先生と呼ばれると学生に呼ばれるみたいだけど、大臣のお嬢さんと呼ばれるよりはマシだったので承諾した。

「妃奈子さん、いってらっしゃい」
「三田村君、いってきます」

三田村君に送り出されて家を出た。
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