私のボディーガード君
講義が終わると、数人の学生たちが私の本を持って前に来る。サインをして、廊下に出ると若林さんが待機していた。

もう時刻は夕方6時を過ぎている。窓の外は真っ暗。今日もよく働いたな。

「佐伯先生、お疲れ様です。良かったらどうぞ」
若林さんがペットボトルのレモンティーをくれた。

「ありがとうございます。いただきます」
ゴクッと一口飲んでから、若林さんと一緒に研究室まで移動した。

研究室に戻ると今度は溜まった書類仕事にとりかかる。
大学を出たのは8時頃だった。

若林さんが運転するSUVの後部座席で思わずため息が出た。

「お疲れになりましたか?」
運転席から若林さんに話しかけられる。

「休み明けだから、普段より仕事が多くて」
「良かったらお休みになって下さい。ついたらお声をかけますから」
「ありがとう。そうさせてもらおうかな」

若林さんの気配りがありがたい。

ほんの5分のつもりで目を閉じた。
そして、声がかかる。

「到着しました」

若林さんの声にハッとして外を見ると、三田村君と同居している家ではなく、世田谷の実家だった。

え? なんで?

じっと若林さんを見ると、「本日はこちらにお泊り下さい」と一方的に言われ、何がなんだかわからないまま降ろされた。
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