私のボディーガード君
チョコレート色の玄関ドアを開けると、長年佐伯家に仕えてくれているお手伝いの吉野さんが出迎えてくれた。

「妃奈子さん、お帰りなさい。お食事は済みましたか?」
くしゃっと笑った笑顔にほっとする。実家に帰って来たのは二年ぶりぐらい。
母は会合か何かで帰りは深夜になるらしい。それを聞いてほっとした。

「では、また明日お迎えにあがります」
玄関で若林さんがお辞儀をして帰ろうとする。

「ちょっと待って下さい」
私の意志を確認せず実家に連れて来た事に腹が立っていた。
三田村君だったら絶対にそんな事はしない。

「何でしょうか?」
若林さんが無表情にこっちを見る。

「私は実家に帰るなんて聞いてませんけど」
「三田村からそのようにと言われたので」

三田村君が?

「三田村は帰りが遅くなるそうです。佐伯先生を一人にする訳にはいかないから大臣のお宅にお連れするようにと。こちらでしたら、24時間体勢で警備にあたっていますし、警察官も門の前に立っておりますから安全です」

そっか。三田村君、帰りが遅いのか。
でも、ホームセキュリティに入っているし、家に一人でも大丈夫なんだけどな。

「事情はわかりました。今度からは着く前に教えて頂けるとありがたいです」

こっちを見ていた若林さんの眉尻がわずかに上がる。
< 88 / 210 >

この作品をシェア

pagetop