私のボディーガード君
翌朝、ダイニングルームに降りていくと、8人掛けのテーブルの前でコーヒーを飲んでいる母と会ってしまった。

「ひなちゃん、今夜は一緒にご飯を食べない?」

バッチリとメイクをした顔をこっちに向けて、母が穏やかに微笑んだ。

「今夜はこちらには帰って来ませんので」

母から一番離れた場所に腰を下ろして答えた。

「家じゃなく、ホテルでご飯を食べましょう。ひなちゃんに会わせたい人がいるのよ」

甘えたような声で母が口にする。
会わせたい人がいるという時は要注意だ。ほぼそれはお見合いの席で、どこかの御曹司か、母が可愛がっているキャリア官僚と会う事になる。

「男性は無理ですから」
「三田村君は大丈夫そうじゃない。一緒に暮らせる程になったんでしょ?」

三田村君の名前に胸が痛くなる。
今はその名前を聞きたくない。

「彼はボディーガードですから」
「ボディーガードだったら大丈夫なの? じゃあSPとお見合いしてみる?」

なんでそうなるのか。
母の思考についていけない。

「お見合いはしませんから! 前にも言いましたが私の結婚は諦めて下さい。私は一生独身ですから」

これ以上、母と顔を合わせていたくない。
席を立ち、ダイニングルームを出た。

やっぱり実家に戻るなんて考えられない。たった二日泊まっただけで、ストレスが溜まる。
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